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風明

 

「…暑い…。」

 

朝の光が届けてくれた手紙に書いてあったのは、

ひとつ、今日が雲一つない快晴であること。

それともうひとつ…今日も暑い日になりそうだということ。

 

 

普段よりもだいぶ早く目が覚めてしまった。

ここのところ日課になっているシュヴァイツァーのモーニングコールも、

まだしばらくは鳴り響くことはなさそうだ。

…部屋のドアを開け放しにしておけば、

今日はあのノック音が鳴ることもないかな。

 

 

ほぼ脱ぎ掛けだった寝間着からサマーベストに着替える。

本当はもっと薄着が良いんだけれど、規則だから仕方ない。

 

 

『規則だから』?

 

 

…ん?

自分らしくない自分の言葉だったけど、

なんだか妙に聞き覚えがある言い回しだ。

確か…ここ最近で聞いたことがあったような…。

 

 

 

…?

 

……、

 

………、

 

 

『規則ですから当然でしょう!?』

 

 

 

あぁ、それだ。(おはよう、メルクロワ)

やっぱり、次の監督生は彼以外には考えられないね。

 

今年のシルフィードは寮長のクーベルタン先輩を中心に、

監督生のグラツィアーニ先輩とケスラー先輩、

そして副寮長に僕、他の監督生は…まぁ、良いとして。

一言で言えば、タイプの違う人間が集まって統制している。

お互いが協力して同じ方向を見れば、隅々にまで目が行きわたり、

多くの生徒から信頼を得ることができると思う。

 

逆に言えば、それぞれが替えの利かない歯車みたいなもの。

関係の綻びはすぐに不協和音を奏で、やがて崩壊する。

 

 

まぁ、あのクーベルタン先輩のことだから、

そんなこと、起こさせるわけないんだけどね。

 

 

 

…さて、このまま時間が過ぎるのを待っているのも暇だし、

朝の散歩にでも出かけようかな。

シュヴァイツァーにも、僕を捜す訓練をさせてあげないとね。

今日は風も吹いていないから、まだ涼しい地下室がいいかな…。

 

 

 

「そう言って僕は、部屋のドアを開けたまま出ていくのだった。」

なんてね。

15:00 (13ago)6年生 ルチアーノ・アウソニオ・ベラルディ シルフィード副寮長・監督生 comments(0)
風立


ティーパーティーの翌日。
いつもより小気味よく、部屋のドアが叩かれた。


「マスター!起きて下さい、マスター!!」





……

………シュヴァイツァー?



「おはようございます、マスター!朝ですよ!!起きて下さい!!!」


珍しいな、シュヴァイツァーは、朝は弱いはずなんだけど…。


ドアを叩く勢いのまま、扉が開かれる。

そこには、片手にタオルとシャツを抱え、瞳を爛々と輝かせるシュヴァイツァーの姿が。


…寝ぼけた頭で少し考えただけで、大方の予想は付いた。

たぶん、メルクロワの仕業だね。


「やぁ、おはよう、シュヴァイツァー。今日は珍しく早いね。おかげですっかり目が覚めたよ。」

その言葉に、シュヴァイツァーは嬉しそうに声を弾ませる。


「おはようございます、マスター!
 …実は昨日、メルクロワ先輩に言われたんです!
 『あなたは副寮長の寮弟なんですから、
 もっとしっかり副寮長のお世話をしなくてはいけませんよ』って!!
 だから僕、頑張ります!これからも毎日、起こしに来ますね!!」


そう言うと、シュヴァイツァーはカーテンを開けたり、寝具を整えたり、

鳥籠のカバーを外してブレッザを起こしたり…、忙しなく僕の部屋の整理を始めた。


…やれやれ。やってくれたね、メルクロワ。



しかも、シュヴァイツァーのことだから、きっと自分が起きるために

自分よりさらに年下の生徒に起こしてもらっているのだろう。


いや…、もしかしたら今日くらいはメルクロワが直接、

シュヴァイツァーを起こしに来たということも考えられる。



『全く!副寮長がこう甘くては先が思いやられます!』



って、君は昨日、こう言っていたけれど…。

「クク…、君の方が副寮長に甘いんじゃないか…。」


ついおかしくなって笑いが込み上げてきた僕の様子を見て、シュヴァイツァーは首を傾げた。

「…?マスター?どうかしましたか?」

「いや、なんでもないよ、シュヴァイツァー。
 それより、手紙をお願いしてもいいかな?うん、マグノリアの寮長宛てに…、ね。」


シュヴァイツァーが開けてくれた窓から心地の良い風が吹き込んでくる。

さて、じゃあこの事件の犯人に、お礼でも言いに行ってこようかな…。


鏡を見ると少し寝癖が残ったままだったので、大きめの髪留めを手に、部屋を後にした。
16:00 (13ago)6年生 ルチアーノ・アウソニオ・ベラルディ シルフィード副寮長・監督生 comments(0)
風届


『今月末にウェントワースで開催されるティーパーティーへの招待状』

僕付きのファグ、シュヴァイツァーが届けてくれた手紙の中から、
どことなく見覚えのある字で書かれた封筒を取り出す。



ふぅん…。
元々、ウェントワースの手伝いに各寮から数名出す予定だったはずだが…、
わざわざ僕宛てに…ね。

「マスター?なんですか、それ?」

怪訝そうな顔をしてシュヴァイツァーが僕の顔を覗き込む。
サシェの香りでも嗅ぎ分けたのか…こういうところはさすが、鼻が利く。

ウェントワースの知り合いからティーパーティーの招待状が届いたとだけ伝え、
他の手紙にも同様に目を通す。


そうだな…、せっかく副寮長にもなったことだし、他校や……他寮とも
交流を図っておくべきかもしれない。



「ところで、マスター。ブレッザ…ケガして以来、飛びませんね。」

ブレッザの頭を指で撫でながら、シュヴァイツァーは表情を曇らせた。

「うん、でも…。」

落ち込んだ様子の頭に軽く手を乗せ、ついでにくしゃくしゃと撫でる。

「風になれば、飛べるよ。」
13:05 (13ago)6年生 ルチアーノ・アウソニオ・ベラルディ シルフィード副寮長・監督生 comments(0)
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