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sheep cry


普段陽気なクロフォードのやけに慌てた声が聞こえたと思い、
ふと視線を向けると、そこには苦しみに悶えるジェファーズの顔があった。

事の真相は知らされていないが、
幸いなことにジェファーズの身に何かあったという噂も聞かない。
逆を言うと、一連の騒動について、揉み消そうとしている・・・とも取れる。
もしもあれが何らかの毒を飲まされた結果だったとしたら、

Why done it?(なぜ、ジェファーズは毒を盛られたのか?)

How done it?(どのように、あるいは、何に毒が入っていたのか?)

Who done it?(そして、その犯人は誰か?)

・・・困ったな。
今回の件について、僕たちに与えられた情報が少なすぎる。
そもそも推理小説は苦手だと言っているのに・・・。


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『ですから!サラマンダーの寮長が犯人だって何度も言っているじゃないですか!!』

ニコライ、犯人の決めつけは冷静な思考を鈍らせると言っているだろう。

『オープンキャンパスの日、ブレッザを手にかけた現場をジェファーズは目撃していたんですよ!
 寮長も見たんでしょう!?あの日、ブレッザの羽を肩に付けたサラマンダー寮長と遭遇する直前に、ジェファーズがその方向から走ってきたのを!!』

それは確かにそうだ。僕の見間違いではない。

『だからサラマンダーの寮長は口封じの為にジェファーズの紅茶に毒を盛ったんですよ!!』

・・・待ってくれ、ニコライ。
なぜ毒が入っていたのがジェファーズの紅茶だと断定できる?

紅茶そのものじゃなくても、カップの口を付ける部分や、彼の口にしたお菓子、
カップの取っ手や彼が運んだカートの持ち手に毒を塗っていた可能性もあるんじゃないか?

『・・いいえ!寮長は見たんでしょう?ユア・ハイネスの指示で私たちが水を取りに行っている間にテーブルの上の紅茶は片づけられていた、しかもイーサーの方々が座っていたテーブルだけでなく私たちの座っていたテーブルのものも、と。』

・・・ああ。

『そしてその時に、ジェファーズが口を付けたカップをユア・ハイネスが持ち去っていった、と・・・。ずっと同じテーブルにいたユア・ハイネスがカップのみを持ち去ったということは、ジェファーズはお菓子に手を付けていなかった、と推理できるのではないでしょうか?』

確かに一理はある・・・、が、カップ自体に毒が塗られていた可能性は否定できないよ?

『・・・っ!しかし、手段が違うだけでサラマンダーの寮長が犯人であることに違いはありません。』

ふぅん、じゃあ、まずは君の意見と推理を聞こうか。

『思い出してください。サラマンダーの寮長がペルディーサに言った言葉を。』

言葉?

『こちらのシルフィードの皆さんに、サラマンダーでしか飲めない美味しいお茶をお持ちしろ・・!』

『フン・・・ちゃんとアッサムのブレンドだろうなぁ?』

あぁ、確かに。
最初のは僕がお茶のお代わりを頼んだ時に、次の言葉はペルディーサが彼に紅茶を手渡した時の、だね。

『サラマンダーでしか飲めないお茶、と言ったのはずなのに実際に運ばれてきたのはダージリンとアールグレイ・・。』

同じ種類のお茶ではない・・・言い換えると、
僕たちのところに運ばれてきたお茶は別々のポットで淹れられていた、ということかい?

『違います。私の推理は、私たちのところに届けられるはずのダージリンを、イーサーのところに届けられる予定だったアールグレイとひとつすり替え、そこに毒を盛った、です。』

つまり、毒を盛ることができたのはペルディーサ・・・?

『あくまで、サラマンダーの寮長に脅されて、ですけれど。ですから、アッサムのブレンドかどうか確認した・・・。』

しかしその方法だと、毒入りの紅茶を運ぶのはジェファーズだ。
それを確実に標的であるジェファーズに飲ませることは可能なんだろうか?

カップに汚れでも付けておいたんでしょう。汚れが付いたカップを他の二人に渡すわけにはいかないですから。この方法を取れば毒入りの、カップに汚れのついた紅茶を飲むのはジェファーズになるでしょう。』

なるほど・・・、ブレッザの件といい証拠は何一つないが、一見、筋の通った推理に思えるよ。

『・・・違うんですか?』

ああ。実は一つだけ、不確定な部分がある。
僕は君のお茶と交換したけれど、そのお茶に口は付けていない
それぞれに違う種類のお茶が配られていることを、何となく不審に思ったからね。
そして、僕以外の、君と、シュヴァイツァーと、グラナドスとフォルスブロムはお茶に口を付けていた・・・。

『私が最初に口を付けようとした紅茶に毒が入っていた、とでも?』

今となっては、証明のしようがないんだけどね。
でも、可能性はゼロではない。ただ、そこからどう考えるべきなのかがわからないんだが・・・。

『マスター!僕、わかりました!!』

シュヴァイツァー?何が分かったっていうんだい?

『本来は、僕たちのところに届けられるお茶がアールグレイで、そこに毒入りのダージリンをすり替えたんです!!』

すり替えたって・・・、それは、ジェファーズがかい?

『はいっ!だから最初にメルクロワ先輩のところに運ばれてきた、マスターが口を付けなかったお茶には毒が入っていて、飲んだらすごく危険だったんだと思います!!でもジェファーズ先輩が毒を盛る時に少し自分の手に毒が付いてしまって、そのまま飲食をしてしまって倒れたんじゃないかと思います!』

『ちょっと待ってくださいシュヴァイツァー!?そんな推理じゃ動機も証拠も曖昧だし、何より自滅じゃないですか!?あとブレッザの事件との関連も全く無いですし・・・っ!!って、ちょっと、聞いてますか!!?』

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フフフ・・・シュヴァイツァー・・・いい推理だね・・・・・・・・・zzz・・・・・・。
16:00 (11ago)7年生 ルチアーノ・アウソニオ・ベラルディ シルフィード寮長・監督生 comments(0)
piyo,piyo


「た、大変です!大変です!大変ですぅ〜〜〜〜っ!!」

小動物を思わせるそれが息を切らせて僕の部屋の扉を開けたのは、

まだ朝日も昇り切らないうちだったと思う。


なんだっけ…、オープンキャンパスは先日終わったし、

提出漏れのレポートもなかったと思う…。

誰かと約束をしていた記憶もないし、

メルクロワが僕のポケットから次々とヒヨコを取り出したのも…違う、これは夢の話だ…。


「マスターっ!!これです!これを見てくださいっ!!」

小動物…もとい、シュヴァイツァーが慌てて差し出した一通の封筒。

寝ぼけた頭でそれを受け取り、くるりと裏返す。


ん…グラナドス?サラマンダーの寮長からわざわざ僕宛てに…?


まだ覚醒しきっていない頭で、

少しやぼったい前髪を掻き上げ、珍しい差出人からの手紙に目を通す。


「あの、マスター…、それは、どういう…?」

心配そうな顔でシュヴァイツァーが僕を見上げる。




これは…、




…招待状だね。


「招待状?」

小動物が首をかしげる。

そう、招待状だ。

近日サラマンダーにて開催される、ドミトリー・ヴィジットへの招待状。

…その様子だと、僕以外には届いていないようだね。

先日の事件のこともある、

『身の潔白を証明し、仲良くやろうではないか。』

そんな気持ちで出してきた手紙ではないと思うけど。


…なら、あまり騒がれない方が良いかもしれない。

シュヴァイツァー、悪いが、この話は内緒に…。


と、言い終わる頃には小動物はそこにいなかった。

ん…、まぁ、いいか…。

シュヴァイツァーがメルクロワの部屋を訪れ、

血相を変えたメルクロワが部屋に飛び込んでくるまで2分、かな。

ここは一旦部屋から逃げたと見せかけて、

こっそり部屋の隅に隠れてやり過ごしつつ夢の続きでも見ようかな…。






『どうして寮長のポケットからこんなにヒヨコが出てくるんですか!?』




先ほど見た夢の中でのメルクロワの表情を思い出すと、少しだけ可笑しくなった。
15:00 (11ago)7年生 ルチアーノ・アウソニオ・ベラルディ シルフィード寮長・監督生 comments(0)
W+H+W


『Who done it?(誰がやった?)』

ブレッザの亡骸は、空に撒くことにした。
今日も良い風が吹いている。
「さぁ、風になっておいで。」
無数の粉となったブレッザは、その躯を少しだけ煌めかせると、すぐに四方に散らばり見えなくなった。


『How done it?(どうやったか?)』


この事件を解決するには、正面から物事を見つめてはいけない気がした。
例えばとある名探偵は、青ざめた顔で首を垂れながら歩いてくる男の手が白く汚れていただけで男に何があったか見極めたそうだ。
僕が見たもの、
不自然なRAの態度
慌てたカルステン
グラナドスの左肩の羽根
そのグラナドスを疑うニコライ
血にまみれたシーツ
ブレッザ、で、あったもの



『Why done it?(なぜ、やったか)』



シーツに大量の血液が付着していたのは、生きたまま羽根を、翼を、脚を、頭を、潰したからだと言っていた。
死んだ生物からは血が吹き出さないのだ、と嫌な笑みを浮かべた彼の顔を思い出して少しだけ不愉快な気分になった。
僕のシーツ、僕の部屋、僕のブレッザ。
…事件も僕の部屋で起きたのか…オープンキャンパスとはいえ、誰も目撃者がいない、そんな時間があっただろうか?
他寮の生徒がシルフィード寮に忍び込むチャンスはあっただろうか。



「…参ったな、推理小説は苦手なんだ。」



普段の僕ならば、生徒一人ひとりに「君がやったのか?」と聞くことしかしないだろう。そういう性格だ。





そう、普段の…僕ならね。
14:30 (11ago)7年生 ルチアーノ・アウソニオ・ベラルディ シルフィード寮長・監督生 comments(0)
風奏


『きゃっ』

その日一番の強い風に、わたしの帽子は飛ばされてしまいました。

『待って』

風に乗ってふわふわと飛んでいく帽子を追いかけて、わたしは、

今まで行ったこともないくらい遠いところに来てしまいました。

見た事もないくらい大きな、大きな建物。

どうやらこの気まぐれな風はこの建物に向かって吹いているようで、

わたしの大事な大事な白い帽子は、

正面に見えるその大きな門に向かって吸い込まれていくのでした。



* * * * *


『どうしよう、知らないおうちに入ってきちゃった・・・。』

大きな門をくぐると、そこは・・・中庭?

レンガの積まれた花壇にぐるりと囲まれた石畳、

まんなかには小さな風見鶏。

初めて見る景色をぐるりと見回していると、

後ろからいきなり話しかけられました。

「やぁ、君も風に招かれてきたのかい?」

声がした方に振り返ると、私の白い帽子を手に持った、男の人。

若草色よりも明るい、木漏れ日のような長い髪。

『あの・・・っ!』

わたしが声を出すよりも早く、その人は言葉を続けました。

「はじめまして。ここはシルフィード、この学園で一番良い風が吹く寮だよ。」

寮?学園?

こんなに広いところだから、てっきりお城かなにかだと思った・・・。

「そして僕は、この寮に住んでいる風の精霊。」

えっ?

「はは、冗談だよ。本当はここの学生。名前はルチアーノだよ。」

そう言うと、彼−ルチアーノさんは悪戯っぽい顔をして笑いました。

少し騙されかけたけれど、冷静に考えたら・・・そう、ですよね。

「それじゃ、リトル・レディ。寮を案内するよ。ここへ迷い込んだのも風の導きだしね。」

なんだか、変わった人。

そう思いながらもわたしは、案内をしてくれるという彼の手を握り返したのでした。



* * * * *


ルチアーノさんの案内してくれる場所は、どこも少し変わった場所でした。

建物の間の、風が強く吹き抜ける隙間。

キッチンからの良いにおいが流れ込んでくる廊下。

時間によって日が差し込んだり影になったりする地下道。

猫のたまり場。

鳥の餌場。

干したてのシーツが並ぶベランダ。

・・・ふつう、こういう時って、サロンとか、講堂とか、食堂とかを

案内してくれるものだと思ったのですが・・・。

「じゃあ、次は、僕の一番気に入っている場所へ行くよ。」

そう言うルチアーノさんの後について長い階段を上っていくと、

寮の屋上にたどり着きました。

「どう?良い風が吹いているだろう?」

確かに、ほかの建物に邪魔されずに吹き込む風は自然そのものでした。

そして、周りを見渡すと、

最初に入って来たときにいた中庭。

門の向こうの、自然に草花が咲いているのどかな風景。

建物の間の、風が強く吹き抜ける隙間。

キッチンからの良いにおいが流れ込んでくる廊下。

時間によって日が差し込んだり影になったりする地下道。

猫のたまり場。

鳥の餌場。

干したてのシーツが並ぶベランダ。

それらが全部見渡せるのでした。

「特に僕はね、ここで風を感じるのが一番好きなんだ。」

そう言って屋上のへりの部分に腰掛けるルチアーノさん。

ああ、あ、危ないですよ!!?

「大丈夫だよ。きっと風が守ってくれてるから。」

・・・やっぱり変な事ばかり言う人だ。

「君も、来るかい?リトル・レディ?」

「やはりここにいたんですね、探しましたよ。」

振り返るルチアーノさんの声を、厳しい声が遮りました。

そこにいたのは、ブルネットの髪にきりっとした眼鏡を携えたすこし怖そうな人と、

灰色がかったつんつん頭の、ちょっと気弱そうな人。

「あぁ、メルクロワ。今、ちょうどこちらのレディに寮を案内していたんだ。」

そう言って私の方に目をやるルチアーノさん。

メルクロワと呼ばれた男の人は、しかめっ面で答えました。

「レディ?そんな人はどこにも…。」

その時、もう一度、強い風が吹きました。

そして、わたしの帽子は、再び空に舞い上がってしまったのです。


* * * * *

「レディって、綿帽子のことだったんですね・・・はぁ、全く、あなたは・・・」

「メルクロワ、風に招かれて来たんだから、誰であれ歓迎しないと。」

「とはいえ、シュヴァイツァーに仕事を頼んだままいきなりいなくなるだなんて、
 あなたには寮長としての自覚が・・・!」

「それは悪かったね、シュヴァイツァー。でも、楽しかっただろう?」

「・・・あの綿帽子、門の外まで飛んでいけましたかね?」

「どうかな。でも、今日は良い風が吹いているからね。」


* * * * *

・・・これが、わたしの、たんぽぽの綿帽子のお話です。

それでは、風が吹いたら、、また。
14:30 (11ago)7年生 ルチアーノ・アウソニオ・ベラルディ シルフィード寮長・監督生 comments(0)
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